深刻な人手不足の中で外国人材を採用しても、すぐに辞めてしまっては採用コストが全て無駄になります。特定技能をはじめとする外国人社員の定着率を高めるには、彼らが抱える離職の原因を深く理解し、解消に向けて努力することが不可欠です。
目次
外国人社員の離職の3大理由
外国人社員の早期離職の原因は、表面的な問題だけでなく、日本社会や企業特有の文化に根差していることが多いです。
想定外の「孤立感」と「相談のしづらさ」
最も深刻な原因は、職場や生活での孤立です。
- 言語の壁: 日常会話や業務指示が十分に理解できないことによるストレス。
- 文化の壁: 日本人社員との人間関係が築けず、職場で「仲間」として扱われていないと感じること。
- 相談相手の不在: 困ったときに、母国語で安心して相談できる窓口や担当者が社内にいないこと。
「賃金と為替」による経済的不安
「日本で稼ぎたい」という動機を持つ外国人材にとって、給与への不満は直接的な離職理由になります。
- 賃金格差: 契約時や期待していた賃金水準と、実際の給与や手取り額(税金・社会保険料控除後)との間にギャップがあった場合。
- 円安の影響: 円安が進行すると、母国へ送金した際の価値が下がり、「日本にいるメリット」が急激に薄れます。結果、より賃金が高い都市部や他社、もしくはオーストリアや韓国などの海外へ転籍を考えるようになります。
日本特有の「企業文化の壁」(察する文化)
日本人には当たり前の習慣や文化が、外国人材にとっては極めて高い壁となり、ストレスの原因となります。
- 「察して行動する」文化: 日本の職場では、指示が曖昧で「言わなくてもわかるだろう」「空気を読んで」といった非言語的なコミュニケーションが求められます。これは、論理的な指示を求める外国人材にとっては理解不能であり、業務の停滞や評価への不満につながります。
- 長時間労働: サービス残業や休憩時間の取得が難しいなど、母国の労働環境と比べて過度な長時間労働が常態化している場合。
定着率を高めるための会社の工夫
離職の真因を解消し、外国人社員を長期的に定着させるための具体的な施策を提案します。
1. 「相談のプロ」を配置する
義務的支援(定期面談など)の実施に加え、形式的ではない、信頼関係に基づいたサポート体制を作ります。
- 母国語での相談窓口: 登録支援機関に委託している場合でも、社内に「母国語対応できる日本人社員」または「頼れる外国人社員(メンター)」を配置し、匿名で相談できるホットラインを設ける。
- 定期的な面談の質の向上: 3ヶ月に一度の面談を義務として消化するのではなく、「困りごとはないか」「会社への要望はないか」を真摯に聞く時間とし、外国人材の評価や目標設定も行う。
2. 現場のコミュニケーションを「見える化」する
「察する文化」の壁を壊すには、現場のコミュニケーションを論理的で明確なものに変える必要があります。
- 「指示は5W1H」の徹底: 業務指示は、「いつ(When)」「何を(What)」「誰が(Who)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」を必ず含め、曖昧な表現(「適当に」「なるべく早く」など)を避けるよう、日本人社員にも徹底させる。
- 「やさしい日本語」の活用: 専門用語やスラングを使わず、短い文で、正確に伝えるトレーニングを日本人社員向けに実施する。
3. 「キャリア」と「経済性」のインセンティブを提示
外国人材が日本に留まる経済的な理由を企業側が作り出す努力をします。
- 昇給・昇進の明確化: 「〇〇の資格を取れば昇給」「〇年後にはリーダー候補」など、昇給・昇進の基準とルートを契約時に明確に提示し、目標を持たせる。
- 特定技能2号への移行支援: 優秀な人材に対しては、在留期間が無期限となる特定技能2号(または永住権)への移行を全面的にサポートする方針を打ち出し、長期定着へのモチベーションを高める。
外国人社員の定着は、彼らを「労働力」ではなく「会社の未来を支える仲間」として迎え入れ、文化的な努力を惜しまない企業にこそ実現するのです。










