我が国の深刻な人手不足を解消する上で、外国人材の受け入れ拡大は不可欠である。特定技能制度の下、介護や外食産業などで重要な役割を担う彼らの存在は、もはや社会の基盤となっている。しかし、その定着を阻む深刻な問題が現場で発生している事実を、私たちは直視しなければならない。
特定技能人材の転職支援を行う登録支援機関の面接担当者から、衝撃的な実情を聞いた。新たな職場を求める外国人材の多くが、転職理由として「約束された給与が支払われていない」ことを挙げているという。職場のいじめや生活環境の不適応も存在するが、最も大きな動機は、給与に関する金銭的なトラブル、すなわち雇用契約時の説明不足にあると指摘されている。
問題の根源は、給与の「額面」と「手取り」に関する透明性の欠如だ。日本の給与体系では、総支給額(額面)から社会保険料や税金が控除され、実際に受け取る手取り額は目減りする。この複雑な仕組みは、日本語能力が十分でない外国人材にとって正しく理解されていないことが多い。
外国人材は希望を抱いて来日したにもかかわらず、働き始めて初めて、生活設計が狂うほどの手取りの少なさに直面する。この失望感、「裏切られた」と感じる感情こそが、彼らを早期の転職へと駆り立てる主要な動機となっている。適切な給与の説明が最初にあれば、多くの離職は防げたはずであり、企業側も貴重な人材の流出を避けられただろう。
ここで改めて注目すべきは、法務省が特定技能人材の支援業務として義務付けている「事前ガイダンス」の存在である。これは在留資格申請前に行われるもので、その中で雇用契約・雇用条件の内容を、人材が十分に理解できる言語で説明することが明確に規定されている。この事前ガイダンスが本来の趣旨通りに徹底されていれば、給与に関するトラブルは大幅に避けられるはずだ。しかし、現場の転職相談が増加している事実は、この義務化された「生活支援業務」が形骸化している可能性を示唆している。
外国人材の受け入れは必須である今、彼らの労働環境、特に給与に関する透明性の確保は、喫緊の社会的責務だ。不透明な雇用慣行は、「日本での就労は不利だ」という悪評を国際的に広め、結果的に日本全体の外国人材確保を困難にする。これは、我が国の経済成長にとって大きな足かせとなる。
受け入れ企業は登録支援機関と連携し、雇用契約時の事前ガイダンスにおいて、日本語と母国語を併記した明確な文書を用い、総支給額、控除項目、最終的な手取り額を、具体的な数字で丁寧に説明する義務を履行すべきである。そして特に「額面と手取りの差」を理解できるまで時間をかけて説明し、その理解度を厳格に確認する役割を強化する必要がある。
人手不足の解消は、一時的な対策ではなく、外国人材が安心して働き、日本での生活に希望を持てる公平な雇用環境を構築することによって初めて達成される。外国人材の信頼なくして、日本の未来はない。今こそ、この問題の深刻さを認識し、「安心して働ける日本」を実現するための覚悟を持った変革を断行しなければならない。










