日本の労働力不足が深刻化し、特定技能外国人が過去最高を更新する中、外国人雇用に関する専門家の不足が顕在化しています。特に、法律の専門家である弁護士業界においてすら、入管法や外国人労働法制に精通した人材は「まだ限られている」のが実情です。
この専門家不足は、企業が外国人材を適法かつ円滑に雇用する上での大きな障壁となっており、新たな専門資格である「外労士」が、この社会的な空白を埋める重要な役割を担うことになります。
目次
弁護士業界における専門家不足の実態
現在、多くの企業や事業主が「外国人を雇用したい」「雇ったものの問題が生じた」といった専門的な相談を弁護士に持ち込んでいます 。しかし、このニーズの増加に対し、弁護士側での対応力は追いついていません。
- 専門知識の偏り: 弁護士は主に労働法に関する案件を扱うことが一般的ですが、外国人雇用に必須となる入管法や在留資格制度に関する専門知識を体系的に持つ人材は限られています 。
- 適切なアドバイスの不足: 相談が増える一方で、弁護士業界全体で入管法に詳しい弁護士が不足しているため、企業に対して適切にアドバイスできる人材が少ないのが現状です 。
この現状は、外国人雇用に関する問題が、単なる法律論を超え、入管法、労働法、社会保険労務、さらには国際的な手続きを横断する高度な専門性を必要としていることを示しています。
「外労士(がいろうし)」が社会で果たすべき役割
このような専門家不足の状況で、「外国人労務管理士」、通称「外労士」資格を持つ専門家は、単なる知識提供者ではなく、日本社会の持続可能性を支える重要なインフラとしての役割を果たすことが期待されます。
役割①:複合的な法務リスクの管理
外国人雇用では、労働基準法違反(賃金未払い、安全衛生法違反)と、入管法違反(不法就労助長、在留資格の不適正管理)という、二重の法務リスクが発生します。外労士は、これらのリスクを横断的に理解し、「特定技能計画と反する取決め」といった不正を未然に防ぐための、高度なコンプライアンス体制を企業に提供します。
役割②:企業の「安心」と人材の「定着」を両立
特定技能外国人の受け入れ拡大に伴い、企業は安定した人材確保を求めています。外労士は、制度を正しく運用することで、企業に行政処分リスクの回避という「安心」を提供するとともに、外国人労働者に対して適正な労働環境を保証し、人材の定着率向上に貢献します。
役割③:国際的な労働力移動の円滑化
弁護士業務にとどまらず、インドネシアのバリ島のように海外に日本語学校や技能指導拠点を設けるなど 、海外から日本国内への人材紹介事業全体をサポートできる外労士は、国境を越えた労働力の移動を円滑化する国際的なパイプ役としての役割も担います。
「入管法に詳しい先生」がまだ限られる現在、外労士は、法律と実務の両面から、人手不足に悩む日本の企業と、日本で働くことを目指す外国人材との間に立ち、適法で公正な雇用環境を実現する、不可欠な存在となるでしょう。