【追跡】かつての「消えた留学生」騒動から数年。あの問題は今、どう形を変えたのか

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数年前、連日のようにメディアを賑わせた「消えた留学生」という言葉を覚えているでしょうか。ある教育機関から千人単位の留学生が所在不明になり、彼らが実は出稼ぎ目的で入国していた実態が明らかになった問題です。

あれから時が経ち、2026年となった現在、あのようなセンセーショナルなニュースを見聞きすることは激減しました。では、問題は解決したのでしょうか。それとも、水面下に潜っただけなのでしょうか。この数年で劇的に変化した日本の外国人受け入れ事情と、その現在地を解説します。


「留学」という名の抜け穴

かつての問題の核心は、留学制度の「抜け穴」にありました。 当時、問題となったのは正規の学部生ではなく、「学部研究生」や「聴講生」といった、比較的審査が緩やかな枠組みでした。本来は研究のための準備期間であるはずが、実際には「日本で働くための隠れ蓑」として悪用されていたのです。教育機関側も定員割れを防ぐために数を求めた結果、日本語能力も学習意欲も不十分な学生が大量に入国し、結果として学校に行かずに失踪し、不法就労に走るという構図でした。


厳格化された審査と「入り口」の封鎖

しかし、この騒動をきっかけに国は大きく舵を切りました。 文部科学省と出入国在留管理庁は連携を強化し、留学生の在留資格審査(ビザ発給)を厳格化しました。具体的には、学費や生活費を支払う能力があるかの厳密なチェックや、出席管理の徹底を教育機関に義務付けたのです。その結果、単なる出稼ぎ目的で「留学ビザ」を取得することは極めて困難になりました。かつてのように、特定の学校から集団で人が消えるという現象は、仕組み上起こりにくくなったと言えます。


「隠れ蓑」から「正規ルート」への移行

では、日本で働きたいと願っていた外国人たちはどこへ行ったのでしょうか。 ここで登場するのが、2019年に創設され、その後拡大を続けている「特定技能」などの新しい就労資格です。国は「留学生」という建前での入国を厳しく絞る一方で、人手不足の現場で働くための「正規の就労ルート」を整備しました。 つまり、かつては留学ビザという本来崇高な入り口が一部悪用されてしまっていたところが、制度の是正により実態に即した形へ移行したのが、ここ数年の大きな変化です。


ニュースの裏側にある「静かな多数派」

一方で、ニュースでは依然として外国人による犯罪や不法滞在の摘発が報じられます。 留学ビザのハードルが上がったことで、より悪質なブローカーの手引きにより、短期滞在などの別ルートで入国し、最初から不法就労を目論む層や、技能実習先から逃亡して犯罪グループ化するケースが存在するのは事実です。これらは治安上の課題として、警察による取り締まりが強化されています。

しかし、ここで私たちが冷静に見るべき事実があります。 ニュースになるのは、常に「ルールを破った一部の人々」だけです。その裏側には、ニュースには決してならない圧倒的多数の「普通の」「真面目な」外国籍の方々がいます。

朝のコンビニエンスストアでレジに立つ店員、介護施設でお年寄りの生活を支えるスタッフ、建設現場で汗を流す職人。彼らの多くは、厳しい審査をパスし、法律を守り、税金を納め、日本語を学び、私たちと同じように日本の社会システムの中で懸命に働いています。今の日本社会は彼らの労働力なしには一日たりとも回らないのが現実です。

「消えた留学生」問題は、日本の入国管理制度に大きな問いを投げかけました。その結果、制度はより厳しく、そしてより実用的に進化しました。一部の犯罪報道に目を奪われがちですが、私たちの隣で真面目に働き、地域社会の一員として生活している多くの外国人材の存在こそが、この数年間の変化の「答え」なのかもしれません。