衆院選の投開票から日が浅い。各党の論戦が繰り広げられた選挙戦のさなか、ある党首がテレビ番組で放った言葉に耳を疑った。
「外国人移民をこれ以上入れるべきではない」その根拠として、政府が進める技能実習制度から「育成就労」への移行を、単なる制度の看板の掛け替えに過ぎないと断じ、問題は山積したままだとした。さらに家族帯同を認めている点を挙げ、「野放図に流入している。これを止め、日本を守る」と主張したのである。
有権者の不安を突くあまりに乱暴な議論であった。制度の細部や実態を捨象し、排外主義的な空気を醸成しかねない発言には、強い危惧を覚える。
まず、「育成就労」への移行を単なるスライドと切り捨てるのは適当ではない。現行の技能実習制度が抱える人権侵害や転籍制限といった構造的な問題を解消し、外国人材を「労働力」として正面から位置づけ直すのが新制度の眼目だ。我が国の産業界が直面する現実的な要請と、国際的な人権基準の両立を目指す試みであり、十把一絡げに否定すべきものではない。
より深刻なミスリードは、家族帯同に関するくだりだ。あたかも来日した外国人が、直ちに、かつ無制限に家族を呼び寄せられるかのような印象を与えるが、現実は全く異なる。
家族帯同が認められる「特定技能2号」の資格を得るには、極めて高いハードルがある。通常、育成就労で3年、特定技能1号で5年の実務経験を積み、その上で高度な技能試験に合格しなければならない。およそ10年近い歳月と研鑽を経て、ようやくたどり着ける「狭き門」なのだ。こうした厳しいプロセスを説明せず、ただ「家族帯同」という言葉だけで「野放図な流入」と結びつけるのは、事実に基づかないプロパガンダと言えようか。
日頃、外国人雇用のアドミニストレーションに関わらない層にとって、こうした政治家の言葉は重く響く。「治安が悪化する」「職が奪われる」といった漠然とした不安が増幅され、内向きな排斥論へと世論が傾く懸念がある。
しかし、冷静に足元を見つめ直したい。人口減少と少子高齢化がかつてないスピードで進む日本において、外国人材はもはや「助っ人」ではなく、社会機能を維持するための不可欠なパートナーである。彼らを排斥すれば、医療・介護、建設、農業、自動車運送など、私たちの生活基盤そのものが立ち行かなくなるのは自明の理だ。
必要なのは、いたずらに不安をあおることではなく、制度の透明性を高め、共生のためのルールを冷静に議論することである。
そのためには、正確な情報の周知が欠かせない。どのようなステップで外国人が日本に定着するのか、制度はどう改善されようとしているのか。我々メディアも含め、専門紙や実務家が丁寧に解説し、正しい知識を社会に浸透させていく責任は重い。
感情的な排斥論・ポピュリズムに逃げ込むのではなく、現実を直視し、持続可能な社会をどう築くか。選挙後の今こそ、冷静で建設的な議論が求められている。










